「吹奏楽の身近さは、人々の繋がりと創造性を育む、生きた力となっているのです」作曲家インタビュー:ジョヴァンニ・サントス氏(Giovanni Santos)



 

 

 

[English is below Japanese]

自身のサイトでも作品を販売されていますが、いくつかの作品の印刷版はMurphy Music Pressを通じて供給をしているプエルトリコ出身の作曲家ジョヴァンニ・サントス氏に、設問に答えて頂く形でインタビュー取材を行いました。

Wind Band Pressと同じくONSAが運営する各ストアではMurphy Music Pressを通じて彼の作品の一部を輸入販売しています。

日本ではまだあまり馴染みのない作曲家だと思いますが、優れた作品を発表し続けています。

Golden Hearts Publicationsのストアでは各作品の参考音源が商品ページ内にあります。
インタビューと合わせて、ぜひチェックしてみてください。


1. まず簡単にあなたの生い立ち、どこでどのように育ったのか、作曲家としての活動を始めたきっかけは何だったのか、などについて教えて頂けますでしょうか?

私はプエルトリコのマヤグエスで生まれました。両親はドミニカ共和国とキューバの出身です。家族は音楽をこよなく愛し、カリブ海の様々な音楽スタイルについて教えてくれたので、私は幼い頃から音楽に囲まれて育ちました。学歴としては、学部はラ・シエラ大学、大学院は南カリフォルニア大学とフロリダ州立大学で学びました。ロサンゼルスでフリーランスのトランペット奏者として活動する中で、ビッグバンドやジャズアンサンブルで演奏するうちに作曲に魅了されるようになりました。即興演奏の魅力に惹かれたことが、作曲への情熱につながったのです。

 

2. あなたは多くの吹奏楽作品を発表しています。吹奏楽にどのような魅力を感じているかについて教えて頂けますか?

私が吹奏楽に最も魅力を感じるのは、その驚くほど豊かな音色と表現力です。吹奏楽は、金管楽器、木管楽器、打楽器といった独自の楽器編成によって、オーケストラのような重厚さと室内楽のような繊細さを兼ね備えた、他に類を見ないサウンドを生み出します。また、学校、大学、地域社会など、あらゆる場所で演奏されている、世界で最も柔軟性の高いアンサンブルの一つでもあります。吹奏楽のこうした身近さは、人々の繋がりと創造性を育む、生きた力となっているのです。

 

3. 吹奏楽曲を作曲する際、特に注意していることや心がけていること、あるいはあなた独自のルールはありますか?

私はあらゆる段階で演奏者のことを常に念頭に置いています。プロの演奏家向けであれ学生向けであれ、それぞれのパートが意味深く、自然で、演奏する喜びを感じられるものになるよう心がけています。また、テンポやオーケストレーション、つまり音が時間とともにどのように変化していくかにも細心の注意を払っています。もし私に作曲上の「ルール」があるとすれば、それは明瞭さと感情的な意図が常にすべての作曲上の選択を導くべきだということです。

 

4. 作曲家として人生のターニングポイントとなった自身の作品があれば、その作品についてのエピソードを教えて下さい。(これは吹奏楽作品でなくても構いません)

「最後の呼びかけ(La Ultima Llamada)」は、発表されてからまだ間もない作品ですが、私にとって大きな転換点となりました。この曲は、母の死という非常に個人的な時期に、内省と成長を経て書かれたものです。作曲を通して、音楽は追悼の意を表す手段であると同時に、人生を祝福するものでもあることを改めて実感しました。そして、この曲が受け入れられたことで、私はこれからも個人的でありながらも人々に語りかけるような音楽、何よりもまず感情的に繋がる音楽を作り続けていこうという気持ちを強くしました。

 

5-a. ご自身の作曲または編曲に強く影響を受けた他の作曲家や編曲家の作品があれば、それについてどのような影響を受けたのか教えて下さい。(クラシックでなくても構いません)

もちろんです。フランク・ティケリ、オマール・トーマス、パーシケッティ、デューク・エリントン、グスタフ・マーラー、アルベルト・ヒナステラといった作曲家たちの音楽から、私は深くインスピレーションを受けてきました。ティケリからは叙情性と構成力の重要性を、トーマスからはグルーヴと文化的アイデンティティの力強さを、そしてヒナステラからはラテンアメリカの伝統音楽に宿るエネルギーとリズムを学びました。クラシック音楽以外では、ジャズや映画音楽からも影響を受けています。マリア・シュナイダーやジョン・ウィリアムズといったアーティストたちは、作曲における色彩感や物語性に対する私の考え方に大きな影響を与えてくれました。私は幼い頃からラテン音楽やスペイン音楽をたくさん聴いて育ったので、サルサやメレンゲのリズムや和声構造は私の脳裏に深く刻み込まれています。そして、作曲家としても演奏家としても、ウィントン・マルサリスは今も昔も私にとって最大のインスピレーション源です。

 

5-b. 上記とは別に、現代の作曲家で特に注目している作曲家がいれば理由と合わせて教えてください。

私はヴィエット・クオンの革新的な音色とリズミカルな躍動感に感銘を受けています。彼は吹奏楽の可能性を再定義する世代の一員であり、エネルギッシュで包括的、そして様式的に多様な音楽を生み出しています。ケヴィン・デイもまた、私が非常に尊敬している作曲家の一人です。

 

6. 将来の目標(またはこれから新たに取り組みたいこと)について教えてください。

私はこれからも、文化やコミュニティをつなぐ音楽を作り続けていきたいと思っています。今後は、合唱団、ラテンアメリカの民族音楽家、マルチメディアアーティストなど、様々な方々とのコラボレーションにも積極的に取り組んでいきたいです。また、若い音楽家たちが自分たちのアイデンティティを演奏する音楽の中に見出すことができるような、教育的な教材やレパートリーももっとたくさん制作していきたいと考えています。

 

7. あなたの作品は、世界中の多くの国で演奏され、評価されていることと思います。日本の若い作曲家や作曲家を目指す日本の学生たちにアドバイスをお願いします。

情熱的な好奇心と恐れを知らない心を持ちましょう。伝統的な日本の音楽から現代ジャズ、エレクトロニック・サウンドスケープまで、あらゆる音楽に耳を傾けてください。他者から学びつつも、その過程で自分自身の個性を失わないようにしましょう。そして何よりも大切なのは、あなたにしか書けない音楽を作ることです。真摯な表現は文化を超えて人々の心に響きます。それこそが、音楽を真に普遍的なものにするのです。


インタビューは以上です。サントスさん、ありがとうございました!

ぜひ多くの方にインターネット上の音源や、演奏会を通じてサントスさんの作品に触れていただきたいと思います。

サントスさんの作品の一部はWBP Plus!およびGolden Hearts Publications Online Storeでもお取り扱いしています。

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(商品ページ内に参考音源がございます)

そのほかのサントスさんの作品は彼のウェブサイトからご注文ください。
https://giosantosmusic.com/


取材・文:梅本周平(Wind Band Press)


 

Interview with Giovanni Santos, composer

1. First of all, would you tell me about your background, where and how you grew up, what made you started as a composer?

I was born in Mayaguez, Puerto Rico. My parents were born and raised in the Dominican Republic and Cuba. I grew up around music, as my family loved to entertain and teach me about the many musical styles of the Caribbean. In terms of education, I attended La Sierra University for my undergraduate degree, and the University of Southern California and Florida State University of my graduate degrees. I began falling in love with composition as a freelance trumpet player in Los Angeles, performing with big bands and jazz ensembles. I loved the art of improvisation, which led to my love for composing.

 

2. What fascinates you about wind band music?

What fascinates me most about wind band music is its incredible range of color and expression. The band offers a unique palette – brass, woodwinds, and percussion – that allows for both orchestral depth and chamber-like clarity. It’s also one of the most flexible ensembles in the world, found in schools, universities, and communities. The accessibility of the wind band makes it a living, breathing force for connection and creativity.

 

3. When composing for wind band, is there anything you pay special attention to or any rules you follow?

I try to keep the performer in mind at every step. Whether writing for professionals or students, I aim to make each part meaningful, idiomatic, and rewarding to play. I’m also attentive to pacing and orchestration – how the sound evolves over time. My “rule,” if I have one, is that clarity and emotional intent should always guide every compositional choice.

 

4. Is there a work of yours that was a turning point in your career?

La Ultima Llamada, though very recent, was a significant turning point for me. It was written during a very personal time of reflection and growth during my mothers passing. The process of writing it reminded me that music can serve as both a memorial and a celebration of life. Its reception encouraged me to continue writing music that is both personal and communicative – music that connects emotionally before anything else.

 

5-a. Are there works or composers that have influenced your writing?

Absolutely. I’ve been deeply inspired by the music of composers like Frank Ticheli, Omar Thomas, Persichetti, Duke Ellington, Gustav Mahler and Alberto Ginastera. Ticheli taught me the power of lyricism and structure; Thomas, the impact of groove and cultural identity; and Ginastera, the energy and rhythm of Latin American traditions. Outside of the classical world, I also draw from jazz and film music – artists like Maria Schneider and John Williams have influenced how I think about color and narrative in composition. I grew up listening to a lot of Latin/Spanish music, so the rhythms and harmonic structures of salsa and merengue are deeply engrained in my brain. Wynton Marsalis is, and has always been, my biggest influence as a composer and musician.

 

5-b. Are there contemporary composers you’re particularly interested in right now?

I admire Viet Cuong for his innovative textures and rhythmic vitality, he’s part of a generation redefining what the wind band can be – energetic, inclusive, and stylistically diverse. Kevin Day is also someone I highly admire.

 

6. What are your future goals or projects?

I’d like to continue writing music that bridges cultures and communities. I’m interested in exploring more collaborations – perhaps with choirs, Latin American folk musicians, or multimedia artists. I also want to create more educational resources and repertoire that inspire young musicians to see themselves represented in the music they perform.

 

7. What advice would you give to young Japanese composers and students who want to become composers?

Be passionately curious and fearless. Listen to everything – from traditional Japanese music to contemporary jazz to electronic soundscapes. Learn from others, but don’t lose your own voice in the process. Most importantly, write the music that only you can write. Authenticity resonates across cultures – it’s what makes music truly universal.

 

Interview and text by Shuhei Umemoto (Wind Band Press)


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